特集 日常検査法の基礎知識と実技
血清学
血清学概論
鈴田 達男
1
1東大病院中央検査部
pp.1213-1220
発行日 1965年12月10日
Published Date 1965/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542915853
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I.抗原抗体反応にあずかる因子
1.抗原と抗体
ある動物になにか異種の物質,たとえば種の違う動物の血清や血球を注射したり,あるいは細菌の侵入をうけたりすると,その動物の血清中には注射された物質や侵入した細菌と特異的に反応するものが出現する。この血清中の物質は「外から侵入した異物に対抗するもの」という意味で抗体とよばれ最初侵入したもののことを「抗体を産生させるもとの物質」という意味で抗原とよんでいる。
この抗原と抗体とはどちらか一方だけを切りはなして単独に定義することはむずかしい。たとえば抗原の定義として教科書には次のように書いてある。「抗原とは生体中に侵入したときにこれを刺激して抗体を形成させ,これと特異的に反応する物質である」こういってもそれは抗体に責任を転嫁しただけであって,「しからば抗体とはなんぞや」と聞かれると「抗原によって産生され,それと反応するもの」と答えるのではいつまでたっても堂々めぐりで少しも問題の解決にはならない。血清学が理解しにくいと考えられる原因の一つはこのような定義の不明確さにあるのかもしれない。したがってあまりむずかしいことを考えずに抗原と抗体とをひっくるめて最初のように理解するのが一番無難なように思われる。
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