特集 日常検査法の基礎知識と実技
病理学
主要臓器の肉眼的鑑別
清水 興一
1
1慶応義塾大学病理学教室
pp.1145-1147
発行日 1965年12月10日
Published Date 1965/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542915843
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はじめに
私に与えられたテーマは主要臓器の肉眼的鑑別であるが,臓器全体であればもちろんたとえ臓器の一部であってもそれがある程度大きい組織片であれば肉眼的に鑑別がいたって容易であろう。また解剖あるいは手術によりとり出された臓器を実際にみる機会があれば,大部分の臓器の鑑別は容易にできるようになる。すなわち「百聞一見に如かず」ということである。したがってここでは技術者の方々が接する機会の多い,すでに切出された臓器,組織片の肉眼的鑑別についてのみ述べることにしたい。切出しは原則として,手術材料でも剖検例でも標本を検鏡する人,(病理医)が行なうのが最も適当である。なぜならば病理組織学的な診断は肉眼的所見と顕微鏡的所見の両方を併せ知ってこそ,正確さが期待できるからである。しかしながら技術者もまた組織片についてその臓器組織が何であるかを鑑別できることが次のような点から必要となるであろう。
①包埋の時に組織片の二つの切り口(割面)のうちどちらを包埋皿の下に置くか,つまり薄切の場合に組織片の両面のうち,どちらから標本を作るかの判定には臓器組織についてのある程度の知識が必要である。たとえば腎では皮質,髄質および腎盂のいずれもが,一枚の標本に入るように切出すのが通常であるが,組織片ではこの三つの部位が一方の面では入っているが,他の面では,乳頭腎盂の欠けた割面ができることがある。また小さい病巣では組織片の全層にわたっていないことがある。
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