技術解説
抗酸菌の生化学的分類
今野 淳
1
,
大泉 耕太郎
1
1東北大学抗酸菌病研究所
pp.961-968
発行日 1965年11月15日
Published Date 1965/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542915812
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はじめに
細菌の分類の基準として世界的に定評のあるBergeyのManual of Determinative Bacteriology1)(1957)によれば抗酸菌は表1のごとくに分類され,このうち人癩菌を除いては,人間に病原性を示すことの明らかなものは温血動物寄生性抗酸菌のうちの人型結核菌(M. tuberculosis)と牛型菌(M. bovis)および人皮膚潰瘍をつくるM. ulceransであるとされ,また培地上で28℃で迅速に発育する,いわゆる雑菌性抗酸菌のなかではM. fortuitumが人間に寄生性ありとされている。もとより人間に結核性疾患を惹き起こすものとして臨床的に重要なのは人型結核菌および牛型菌であり,したがってこれらを動物試験およびその他の生物学的性状より鑑別しさえすれば実際上さしたる問題はなかった。ところが,1935年にBuhler and Pollokが肺結核と同じ病変を有する患者からくりかえし培養された,従来知られていた抗酸菌とは異なる抗酸菌いわゆる非定型抗酸菌(atypical acid-fast bacilli)に関する報告を行なって以来,同様の報告があいついでなされ,人間に結核菌による病変と病理学的にもレントゲン像の上からも全く区別のできない肺疾患を起こす一群の抗酸菌の存在することが次第に明らかとなった。
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