今月の主題 薬剤の検査
技術解説
抗痙攣剤の測定法
渡辺 敬三
1
1東京大学薬学部薬品代謝化学
pp.1475-1488
発行日 1980年11月15日
Published Date 1980/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542915647
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近年における幾多の医薬品の開発は,従来難治とされていた疾病を治す原動力となった反面,その一部の誤った使用によっては薬害を生み,深刻な社会問題を引き起こすに至った.医療における薬物は生体にとりあくまで異物であるにもかかわらず,体内に摂取され,病気の治癒に効果があるとすれば,その薬理作用と化学構造の問題,及びその作用機序が作用位置を含めてどのような過程を経て行われているかを知らねばならない,更に薬物が複合の形で使用される場合には,その未変化体とともにその代謝物につき,同定と薬理活性につき検索する一方,長期閥服用の必要がある場合には個々の患者についてより慎重な配慮が必要である.
ヒトには薬物を吸収,分布,代謝,排泄する機能があるが,種差,個体差,年齢,性別,生活環境がこれらに影響するため,薬物の的確な使用はヒトそれぞれに異なると言っても過言ではない.抗てんかん薬は正にこれらの諸問題を有する薬剤であり,てんかんの発作を最大限に抑制できる血中濃度の正確な測定は投与量過剰による危険防止及び投与量不足による無効果を防止し,個々の患者に適切な治療を行ううえで極めて重要である.このような見地に立って標題の抗痙攣剤については抗てんかん薬にしぼり,生体試料として血液に焦点を合わせた.
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