特集 出血傾向のLaboratory Diagnosis
Ⅵ.出血性素因の新しい検査法と問題点
6.血管に関する機能検査法
前川 正
1
,
小林 紀夫
1
1群馬大学・第3内科
pp.1424-1430
発行日 1980年11月1日
Published Date 1980/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542915640
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止血は血管の示す反応で,間接法としては血管運動神経を介する神経支配,各種ホルモンやビタミン,蛋白や脂質などの栄養,血行動態すなわち,血流,血圧,組織液圧のほか,血中のPO2,PCO2,pHなどの影響も受けるが,直接関与するのは血管収縮や止血血栓の形成である.これら止血反応における直接相のうちで,主役を演ずる止血血栓形成は,血管壁と血小板及び凝固系の反応で始まる.損傷血管壁への血小板の粘着・凝集,内因性凝固系の接触活性化,損傷部に露出した組織トロンボプラスチンによる外因系凝固過程の賦活など,いずれをとっても止血にあっては血管が中心的な役割を果たすことが理解できる.
したがって,何らかの原因による血管壁の異常が一次的でありかつ直接的な原因となって,出血傾向を惹起することは当然ありうることで,実際ここに分類される出血性素因は少なくない.しかるに,その診断は血小板や凝固線溶系の異常に基づく出血傾向のごとく,止血機構における障害を検査によって直接明らかにできるのと異なり,それぞれに特有な出血症状の把握と,現存する止血能検査に異常を認めないという成績に依存するのが現状である.血管機能を検討する良い検査法がないからである.血小板,凝固線溶系の研究は近年著しく進展した.それに伴って,血管,特に内皮細胞や基底膜,コラゲンなどに関する研究も盛んとなり,これらの機能も徐徐に解明されつつある.
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