多変量解析の応用・4
判別分析
古川 俊之
1
,
田中 博
1
1東京大学・医用電子研究施設
pp.449-456
発行日 1980年4月15日
Published Date 1980/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542915437
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はじめに
前回紹介した重回帰分析は,個体の多数の実測された変量から一つの未知の変量を予測するための手法であった.しかし,臨床医学においてもっと頻繁に遭遇するのは,多数の臨床検査値より病名,治療法の良否などについて,個体について択一的な判断を迫られる場合である.このような場合,通常,医師は各種の検査値を重み付けして判断を下していると考えられるが,判別分析とはこの重みを統計的な見地から決定して,判定を定量的に行う手法であると言うことができる.
判別分析は以上のように,診断や治療上の意志決定に適当な性質の手法であるため,適用例も他の多変量解析の手法に比べて圧倒的に多く,研究目的だけでなく臨床的に実用化されているものも多い.判別分析の医学応用例を掲げた本連載1回の表1からも分かるように,特に数量化Ⅱ類(連載8回予定)とともに鑑別診断の定量化に広く適用されている多変量解析法の一つである.また最近ではこの判別分析を発展させ,各群への帰属確率を計算する多重ロジスティックモデル(連載10回予定)が,疫学調査結果の重要な解析手法として評価されてきている.
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