今月の主題 組織検査の進歩
技術解説
骨組織標本作製法—特に大割標本を中心に
宮下 剛彦
1,2
,
尾島 昭次
2
,
丸本 雅夫
3
,
古田 伸行
3
,
川村 亮寿
1
1岐阜県立下呂温泉病院臨床検査科
2岐阜大学・第2病理
3岐阜大学病院中央検査部病理
pp.562-568
発行日 1979年6月15日
Published Date 1979/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542915114
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
骨組織は膠原線維性の基質と,カルシウムを主体とした無機物質の沈着によって構成されている極めて硬い組織であるため,通常の方法により顕微鏡標本を作製することは不可能である.したがってまずカルシウムを除去(脱灰操作)し,薄切しやすくする必要がある.また染色効果を上げるためには標本をできるだけ小さく切り出し,短時間で脱灰が完了するようにしなければならない.そのために,手術により切断あるいは摘出された大型骨組織標本は一般に小さく切り出され,それによって病理組織学的診断がなされている場合が多い.
しかし,骨組織は部位により質的,構造的に一様ではなく,かなり変化に富んだ組織であるので,骨病変の組織像は切り出された部位によって異なる場合が少なくない.骨肉腫を例にとるならば,1個の腫瘤は単一の腫瘍性病変だけでなく,反応性の類骨や骨の増生,壊死,出血などが加わり,複雑な像を呈する場合が多い.したがって小さい標本では病理組織診断に際し好ましくない結果を生ずる恐れがあり,手術材料においては大割標本作製が望ましい.
Copyright © 1979, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.