Ex Laboratorio Clinico・27
先天性α2-plasmin inhibitor欠損症発見への道程
青木 延雄
1
1自治医科大学・血液医学研究部門
pp.262-268
発行日 1979年3月15日
Published Date 1979/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542915046
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発端
1968年私は,米国コロラド州デンバーのコロラド大学医学部内科のDr.von Kaulla教授の研究室で,試験管内でフィブリン魂を溶解する一連の合成化学物質の作用機序について,いろいろと調べていた.この一連の化合物は,von Kaulla教授が長年にわたって臨床への応用を夢みて,多数の化合物からより有効なものをと追い求めて得られたものであったが,その中に抗炎症剤として臨床的に用いられているsodium fulfenamatc (FFA)があった.これを血漿に最終濃度3〜7mMになるように加え,カルシウムで凝固させた後37℃で温置すると,24時間後には凝塊は完全に溶解している.この線維素溶解現象(線溶)の亢進機序には三つの可能性が考えられた.
第一にFFAが直接プラスミノゲンの活性化を促進する可能性である.しかしながら,プラスミノゲンを用いた実験でこの可能性を支持するような成績が得られず,また一般に酵素,特にプロテアーゼが単純な合成化学物質で活性化されることはないとの理由から否定された.第二は生成するフィブリンに構造的な変化が生じ,プラスミンの作用を受けやすくなった可能性が考えられたが,これも使用したFFAの濃度ではそのようなことは起こらず,否定された.残る第三の可能性は,FFAが線溶の阻害因子を不活性化することにより,線溶が阻害を受けずに自由に進行することである.
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