今月の主題 尿中低分子蛋白の測定と意義
性状・測定法・意義
レチノール結合蛋白
金井 正光
1
,
勝山 努
1
,
須原 聡
2
Masamitsu KANAI
1
,
Tsutomu KATSUYAMA
1
,
Akira SUHARA
2
1信州大学医学部臨床検査医学教室
2信州大学医学部第二内科
pp.875-885
発行日 1988年8月15日
Published Date 1988/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542913713
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分子量1〜4万の低分子蛋白(LMWP)は正常ヒト血中に微量に存在するが,その異化は大部分が腎で行われる.腎糸球体におけるLMWPのglomerular sieving coefficient(GSC)はアルブミンのそれに比べて著しく大きいために,正常人糸球体濾液中にLMWPのβ2—mやRBPなどはアルブミンとほぼ匹敵する濃度に存在する.糸球体濾液中のアルブミンやLMWPは近位尿細管で大部分再吸収後に異化され,尿中には微量しか排泄されない.しかし,高度の尿細管障害時には糸球体濾液中の蛋白が大部分尿中に排泄され,アルブミンとLMWPを主成分とした特有の蛋白尿になる.また,LMWPの再吸収能力には閾値があるため,腎不全などでLMWPの血中濃度が閾値以上に上昇するとoverflow型の低分子蛋白尿となる.糸球体性蛋白尿ではLMWPの排泄増加は一般に軽度である.したがって,尿中のLMWP(RBP,β2—m,α1—mなど)の測定は尿細管障害の指標として鋭敏で有用であるが,overflow型と鑑別するために,血中濃度がそれぞれの蛋白の閾値以下であることを確認することが重要である.
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