今月の主題 心電図の最前線
技術解説
平均加算化心電図法
小沢 友紀雄
1
Yukio OZAWA
1
1日本大学医学部第二内科学教室
pp.519-526
発行日 1988年5月15日
Published Date 1988/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542913646
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通常の12誘導心電図では,体表からmVの電位差で心臓の電位の変化を記録できるが,μVの単位の微小な電位はノイズレベルよりも小さな信号のために,高感度増幅するとS/N比が悪く,通常の方法では体表からは記録が困難である.例えば,ヒス東電位は従来は観血的にカテーテル電極を心腔内のヒス束付近に置いてのみ記録がなされていた.このような微小な電位でも,もし出現するタイミングが同じであれば,高感度増幅の後に各心拍ごとの信号を時相を一致させて加算していき,加算回数で平均化すると,ランダムノイズは加算平均の回数nを増加するほど小さくなり,S/N比は√nだけ改善され,取り出したい信号が記録できるようになる.このような方法が平均加算化心電図法である.
一般に,本法は得ようとする微小電位の大きさや周波数特性に応じて,増幅度と帯域濾波処理を設定して,マイクロコンピュータにより加算平均を行わせるものであるために,目的に応じて信号処理のやり方が少しずつ異なることになる.臨床的に本法が応用されるのは,現在主に,ヒス束電位や心室遅延電位の体表からの記録についてであり,その他,洞結節電位や房室結節電位の記録の試みもなされている.本稿では,これらの心内微小電位の検出と,その臨床的役割について述べたいと思う.
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