特集 生検の進歩
I 臓器別生検
i 組織診
8 神経
長嶋 和郎
1
,
井上 和秋
2
Kazuo NAGASHIMA
1
,
Kazuaki INOUE
2
1北海道大学医学部病理学教室
2北海道大学医学部附属病院病理部
pp.1216-1221
発行日 1987年10月30日
Published Date 1987/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542913458
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はじめに
神経系組織の生検で日常もっとも多いのは脳腫瘍である.未梢神経生検も内科的疾患の診断に重要であるが,紙数の都合上,詳細は他誌書を参照されたい.
脳腫瘍診断は画像診断,ことにCTスキャン,MRIの導入できわめて容易となり,かつ画像判読も進み,ある程度の組織診断を含めた腫瘍の性状を推測することが可能となってきている.さらに病理組織診断も種々のマーカー蛋白を用いた免疫染色法のルーチン化により,いっそうきめ細かになってきている.腫瘍の組織像はその腫瘍の生物学的特徴をも示しており,組織所見により診断と分類がなされ,かつその所見に基づいた治療,予後調査・疫学統計が確立されてきている.しかし,あくまでもそれは腫瘍の診断であり,<腫瘍の原因>を解明するためには動物実験のみならず,最近の先端技術をヒト脳腫瘍研究にも導入し,腫瘍細胞のバイオロジー,特異蛋白の同定,特異的染色体変化の分析,特異遺伝子発現の研究などにも応用されなければならないであろう.そして,これらの研究に協力していくためには,再び,これらの研究の基礎となる,少量であっても確実な腫瘍部位での組織診断が重要となってくるのである.
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