今月の主題 酵素結合性免疫グロブリン
検査と疾患—その動きと考え方・125
潰瘍性大腸炎
戸沢 辰雄
1
,
里見 匡迪
2
,
山村 誠
2
,
下山 孝
2
Tatsuo TOZAWA
1
,
Masamichi SATOMI
2
,
Makoto YAMAMURA
2
,
Takashi SHIMOYAMA
2
1兵庫医科大学中央臨床検査部
2兵庫医科大学第4内科
pp.859-867
発行日 1987年8月15日
Published Date 1987/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542913386
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潰瘍性大腸炎(Ulcerative colitis:UC)は潰瘍やびらんが大腸にびまん性に多発する原因不明の連続性炎症性病変である.下痢や血便のために貧血と栄養障害に陥り,時には全身衰弱を来たす難治性疾患である.クローン病(Crohn's disease)も本疾患とともに非特異性炎症性腸疾患(lnflammatory bowel disease;IBD)に属するが,やはり原因不明で下痢,時に血便を発し,慢性・難治性に経過する.両疾患は相似している点が多く,しばしば対比して論じられる.鑑別が難しい症例に遭遇することもあるが,典型例では病理所見も異なっており,本疾患が大腸の粘膜および粘膜下層をびまん性に侵す炎症であるのに対しクローン病は腸管全層に及ぶ肉芽腫性炎症が限局性に大腸ばかりでなく小腸,時には胃・食道にも飛び飛びに存在している.
本邦の本疾患の第1例は1928年,稲田1)によって報告された.1973年に本疾患は厚生省の難治性特定疾患に指定され,以来約6000名の患者が厚生省の本疾患研究班に登録されている.本疾患は欧米に比し本邦では少ないとされ,発病率は人口10万人当り0.24人,発症年齢は20歳台をピークに若年成人に多く,男女比はほぼ1:1とされている2).近年は若年層,10歳台後半の発症が増加しており,新規に登録される患者数も増加の傾向にあり,綿密な患者調査による実態の把握が急務とされている.
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