特集 先端技術と臨床検査
Ⅸ染色体
3高精度分染法
阿部 達生
1
,
堀池 重夫
1
Tatsuo ABE
1
,
Shigeo HORIIKE
1
1京都府立医科大学第3内科
pp.1406-1412
発行日 1986年11月1日
Published Date 1986/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542913163
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
●はじめに
1960年代フランスのLejeune一派は,染色体異常の解析に必ず前中期細胞を用いていた.構造異常を見いだしやすいという利点を熟知していたからだと思う.分染法の時代になっても,微細な同定を行うためには,このような長い染色体を選ぶのが鉄則である.しかし,通常の培養法ではprophaseやprometaphase細胞の出現頻度は非常に低く,また質も不良で,分析には不適当なことが多かった.ところが1976年Yunis1)は,methotrexate (MTX)による同調培養法を行うと,分裂指数が向上し,質のよい分裂像の得られることを報告した.その後,アクチノマイシンD (actinomycinD)2)やBud R3)を用いる方法も報告された.同調培養を行ったり,染色体の凝縮過程を阻害したりすることで,より早期の分裂像をとらえ,さらに標本の作製に工夫をこらすことで,良質のprometaphaseやlateprophaseの細胞が効率よく収穫できるようになった.
これらの細胞に分染法を施行し,精度の高い分析を行おうとするのが,高精度分染法である.
Copyright © 1986, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.