これからの臨床検査の動向・1【新連載】
臨床検査一般について
吉利 和
1
Yawara YOSHITOSHI
1
1浜松医科大学,東京大学
pp.793-798
発行日 1985年7月15日
Published Date 1985/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542912617
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医療の変貌
医療は原始人からずつと受け継がれたものであるが,みたところではずいぶん変貌したように思える.しかし,いかに形とか現象などが変わったようにみえても,その中に,やはり「医療」として一本につながっているものが見いだされるようである.古代の洞窟生活者の頭蓋骨の化石にも,頭蓋に孔をあけて手術をしたと思われる跡が残っているとか,手足に加えた手術から,薬物療法まで,ずいぶん古い歴史を持っているらしい.
医療の内容も,病人の苦痛の除去ないし緩和から始まり,その病苦の原因を除去するようなくふう,さらには,原因に対する科学的探究へと進み,初めは純然たる経験に基づいた治療しか無かった時代から,原因に対する考えかたが発展し,加持祈祷,呪術によって,原因の除去ないしそれへの拮抗ということが考えられた.経験技術としての医療から,経験科学による医療へと発展したが,そこから,医療の現場からやや独立した医学の体系が生まれてきた.医学は医療を出発点としながら,しだいにそれから独立したものをうち立てるに至った.医療も,医学という基盤の上に成り立つているということからやや外れて,独立した体系をうち立てるようになった.
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