特集 産業医学と臨床検査
Ⅳ.座談会
産業医学と臨床検査
和田 攻
1
,
原田 章
2
,
児玉 泰
3
,
森 雄一
4
,
福渡 靖
5
,
鈴木 秀郎
6
1東京大学医学部衛生学教室
2(社)関西労働衛生技術センター診療所
3産業医科大学衛生学教室
4(財)神奈川県予防医学協会検査第一部
5労働省労働基準局安全衛生部労働衛生課
6産業医科大学第一内科学教室
pp.1507-1520
発行日 1984年11月1日
Published Date 1984/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542912408
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産業医学における臨床検査は,通常の病院で行われている臨床検査とは大きく異なっている.すなわち,第一に,産業医学の臨床検査では対象が原則として健康者であるため,正常と異常との差がより小さく,厳しいこと,第二に,検査がしばしば職場で行われるために,試料の採取と保存や検査法に特別の注意とくふうが要ること,第三に,病院で行われる臨床検査では通常対象とならないような物質がしばしば検査対象となること,などの点がそうである.また,産業医学の分野の対応や研究の立ち遅れも指摘されよう.医学や検査法の進歩により,現行の法規に規定されている検査項目には,現状に沿っていないものも少なくない.産業医学に関連のある臨床検査には特殊なものが多いにもかかわらず,そのような専門の検査技師の養成施設が設けられていない.検査対象には高齢者が多いが,年齢別の正常値といったデータが少ない.法規の改正や管理者の努力とくふうが求められるところであろう.
この座談会では以上の相違点,問題点を中心に議論されたが,最後に,永年の努力により労働災害や職業病は激減しており,今後はより高齢まで健康で労働が続けられるような健康管理が必要であろう.関係者のこれに対する積極的な取り組みが期待されよう.
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