基礎科学からの提言・9
品質管理の勧め
久米 均
1
Hitoshi KUME
1
1東京大学工学部反応化学科
pp.339-343
発行日 1984年3月15日
Published Date 1984/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542912152
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まえがき
本欄の名前は"基礎科学からの提言"であるが,筆者は品質管理を専門としており,基礎科学とはあまり縁のない人間である.したがって,欄名にふさわしい執筆者であるかどうかは少し問題があるように思われるが,日ごろ臨床化学検査について考えていることを,この機会を利用して述べてみたい.
昨今の臨床化学検査は分析装置の自動化・大型化が進み,日々大量の検体の分析が行われており大きな施設では"Laboratory"というよりは"Fac-tory"と呼ぶべき様相を呈している."量の変化は質の変化をもたらす"とは弁証法の有名な命題であるが,大量の検体処理に当たっては,従来の小規模な分析室において行われていた良い方法は必ずしも良い方法ではなくなってくる.大量の検体処理にあっては,それにふさわしい方法が必要であるが,その具体的な方法の一つとして工業生産における品質管理の考えかたが参考になるのではないだろうか."品質管理"という言葉は臨床化学検査においてもしばしば用いられているけれども,手法面に走りがちであり,大量に物事を処理するための方法としての原理的な理解においては,必ずしも十分とは思われないのである.
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