今月の主題 プロスタグランジン
技術解説
プロスタサイクリンの測定
久米 章司
1
,
桜井 兵一郎
2
,
新村 浩一
3
,
高畑 京也
3
Shoji KUME
1
,
Heiichiro SAKURAI
2
,
Koichi NIIMURA
3
,
Kyoya TAKAHATA
3
1東京大学医学部中央検査部
2三菱油化メディカルサイエンス㈱
3東京大学医学部中央検査部
pp.136-143
発行日 1983年2月15日
Published Date 1983/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542911792
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血小板で作られ血小板の凝集と血管の収縮をもたらすトロンボキサンA2(TXA2)と,血管壁で作られ血小板凝集の阻害と血管の弛緩をもたらすプロスタサイクリン(PGI2)の両者はともに共通の前駆物質から生成され,しかも不安定であることは,生体における止血血栓機構を考えるうえで興味深い.PGI2とTXA2の陰陽的バランスが生体にとってたいせつで,この乱れが血栓や動脈硬化の成因と密接な関係を有している.したがって,臨床的にもTXA2およびPGI2量の測定について興味が集まり,かつその要求性が高まりつつある.
PGI2の測定はその安定性のために,その代謝産物である6—ケト—PGF1αの定量として行われている.定量に関してはラジオイムノアッセイ法(RIA)は感度も高く,実用的で,もっとも一般に用いられているが,抗体の特異性,精度に関してまだ問題を残しているし,さらに血漿中の正常測定値レベルに関しても標準化はなされておらず議論が多く,近年さらに低レベル化の傾向にある.現在のところガスクロマトグラフィー—マススペクトロメトリー法(GC—MS法)による定量法がもっとも正確で信頼のおける方法と考えられてはいるが,機器やサンプル数処理の問題などがあり,一般的な方法とは言えない.血小板凝集を利用したPGI2のバイオアッセイ法は比較的簡単な方法で,目的によっては十分利用されうる価値を有している.
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