特集 臨床検査室マニュアル
Ⅶ.臨床検査の年表
臨床検査のあゆみ
松橋 直
1
1東大・医科学研究所アレルギー学
pp.1315-1320
発行日 1976年11月1日
Published Date 1976/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542909581
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病原体の発見,疾病成立機序の解明,疾病の異常成分の分離同定などにより医学は進歩するが,それに伴って臨床に情報を提供するための臨床検査も進歩する。また,科学技術が進歩し新しい分析機器が発明されると,それを導入して臨床検査法も前進する.更に,システム化が進めば,そのアイデァを取り入れて,臨床検査の領域でも合理的な運営と情報提供により臨床検査の重要性が増大する.こんな立場から,臨床検査のあゆみを探り,作られたのが掲載の年表である.この年表を元にしながら,我が国における臨床検査のあゆみを,先輩の話などを頼りにたどってみよう.
ところで,"臨床検査"という一つのジャンルができるには,検査のシステム化が第一条件である.この検査のシステム化の一つの現れは,検査の中央化であるが,戦前の我が国の医療体制は,これが非常に難しかった.その理由にはいろいろあろうが,新しく開発された検査法が研究対象であったということもある.また,それから得られるデータの解析もまた研究対象であったこともあろう.したがって,研究者としてみれば,その成績を独占したいという気持ちもごく自然にわくであろう.それから,なおやっかいなことには,戦前の体制では他の部門との間の交流が非常にやりにくかった.こうした,もろもろの原因が折り重なって,既に臨床検査のジャンルに入るものであっても,その門戸を開いて広く検体を受け付けることができなかったという.
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