Senior Course 血清
—血清検査の基礎—ウイルスの補体結合反応など
浅川 英男
1
1東京医歯大・中検
pp.976-977
発行日 1976年9月15日
Published Date 1976/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542909495
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ウイルスの補体結合反応
ウイルス性疾患診断に欠かせないのは患者血中の抗体の検索である.その抗体の証明には,中和抗体,赤血球凝集抑制試験,補体結合反応などを用いるのが通常である.しかしそれぞれの抗体には特徴があるので,それをふまえて検討することが大切である.図に感染からの抗体の消長を示した.この図が示すように抗体価のピークは3〜9週目にあって,中和抗体は12週まで下がり,以後3年までプラトーを示す.赤血球凝集抑制抗体は12週までは急激に,以後緩やかに下がる.それらに比較して,補体結合反応は9週でピーク,10か月で完全に消失している.以上のことから感染の有無を臨床的見地からみるときは,補体結合反応により抗体の消長をみるのが都合が良いように思う.それは,ウイルスの感染には不顕性感染があって,経過を追ってその消長をみて,明らかな低下を認めれば新しい感染と判断しやすい利点があるからである.
ウイルスの補体結合反応では梅毒の場合と異なり抗体減量法Kolmer法を用いる.それは,先に述べたようにウイルス性疾患では不顕性感染があって,抗体価の変動を追求するのにはそのほうが都合が良いと思われるからである.
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