カラーグラフ
解説 細胞内乳酸脱水素酵素—化学的同定法を用いる鑑別染色
高橋 正宜
1,2
,
三輪 和子
3
,
国実 久秋
2
1中央鉄道病院中検
2杏林大病院病理部
3聖ヨハネ会桜町病院中検
pp.292-294
発行日 1976年3月15日
Published Date 1976/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542909308
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はじめに
生体内でピルビン酸と乳酸の代謝を仲介するLDHは,電気泳動によりアミノ酸組成の異なるHとMのSubunitsから成る5分画に分かれ,各臓器により,その分布に差があることは広く知られている.また悪性腫瘍組織内におけるLDH総活性の特異的な上昇は現在認められていないが1),正常組織に比し分画では変化がみられ2),マウス胎生期と生後では同一組織でも分画に差があり3),悪性腫瘍と細胞の幼若化の関連につながる興味がもたれている.血清LDHアイソザイムは心および肝疾患に特異的であるが4),悪性腫瘍に関しては癌病変部との隔たり,血漿LDHによる希釈,血球の関与など問題が多く,鋭敏に組織病変を反映せず,その特異性は認められていない5).我々は癌患者に貯留した胸腹水LDHアイソザイムにつき検討を行い,胸腹水V分画上昇30例の内,肝癌8例に血清V分画上昇がみられたが他の癌例の血清は正常パターンを示した.一方,癌患者の胸腹水86例中,癌細胞陽性51例は陰性例に比しV分画に有意の上昇を認めた.また,この場合,剥脱癌細胞内のLDHホルマザン陽性度と上清胸腹水V分画上昇率とは相関を示した.すなわち,胸腹水LDHアイソザイムパターンは,肝疾患以外では,その血清と関係なく体腔液中に剥脱してくる細胞LDHに支配されているといるといえる.
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