異常値の出た時・16
ブドウ糖
大森 安恵
1
1東京女子医大内科
pp.403-408
発行日 1974年4月15日
Published Date 1974/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542908501
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
ホメオとは同一の意であり,スターシスとは状態を表すギリシャ語であるが,私たちの身体の中にはhomeostasis (恒常性)と呼ばれる機構が存在し,生体は常にそれ自体一定の存続を維持するための自動調節が行われているものである.
血中ブドウ糖すなわち血糖にもこのhomeo-stasisがあり,常に一定の値に保つような機構が働いている.つまり血糖は,血中にブドウ糖を増加させる機構と,血中からブドウ糖を消費する機構の2つのバランスによって一定に保たれているもので,血糖が低下した時血中にグルコースを増すものとして,むろん糖質摂取は血糖を上昇させるが,このほかに肝臓に貯蔵されたグリコーゲンが,再びグルコースに分解して放出され,またはタンパク質や脂肪からグルコースが新たに合成されて血中に放出される.血中からグルコースが消失する機構としては,体の組織,筋肉,脳,脂肪組織においてブドウ糖が利用され,過剰のブドウ糖は肝でグリコーゲンとして合成貯蔵される.そのため,健康者では,1日の血糖値の動揺はごく狭い範囲に制限されて,異常な高値や低値をとるものではない.空腹時血糖は65〜95mg/dlで,24時間中最も血糖の低いのは午後3時で最も高いのは午前4時であるといわれ1),もちろん食事をすると血糖はただちに上昇するが,次の食事まではほぼ空腹時の値にかえり,160mg/dl以上には上昇するものではない.
Copyright © 1974, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.