研究
癌患者の体腔液の一般的性状と癌細胞の有無との関係について
岩谷 靖央
1
,
山岸 紀美江
1
,
田嶋 基男
1
,
黒木 須雅子
2
1国立がんセンター細胞診
2愛知県対がん協会
pp.60-63
発行日 1974年1月15日
Published Date 1974/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542908398
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はじめに
癌患者においては,肋膜や腹膜に癌の侵襲がなくても貯留液を認めることが相当にあり,そのことに関してはSaphir1),Koss2)の論文に詳しい.理由として考えられていることは,腫瘍による静脈やリンパ管の圧迫,腸間膜の巻縮,ある種の化学物質の産放,血液成分の変化など記載されているが,そのほかに心機能,肺機能,肝機能,腎機能の不全も加わることであろうし,立場を変えて考えると,癌と別個の疾患の合併は,癌年齢においては日常茶飯事と言わなければならない.したがって,胸腹水の細胞診は,癌患者に関しては,個体における癌腫の存否を問うものではなく,漿膜侵襲の有無を知ることに第1のポイントがある.漿膜侵襲の有無は"手術の価値""予後の測定"に重大な情報となる.ところで,胸腹水の性状に関しては,一般に3-5)"血性である""浸出液である"などの記載があるが,実はそのような記載の中に,漿膜侵襲の有無を区別した立場から,厳密な分類を行ったものはなく単に"癌患者の胸膜水は"というばく然とした視点で捕えたものが多かった.
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