技術解説
2進法とディジタル技術
池田 研二
1
1東大医用電子研究施設
pp.34-40
発行日 1970年1月15日
Published Date 1970/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542906661
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電子計算機や処理システムなどに関連して,最近"2進法による演算"とか"バイナリー・コード"などということばを耳にすることが多い.またこれらがいわゆる"ディジタル技術"と切り離せない関係にあることも,すでに周知のことと思われるが,ではなぜ2進法などという使いなれない数学が登場するのだろう,と疑問をいだかれる方もあることであろう.われわれが数をかぞえるときに,0から9までの10個を順々に用い,次に10と,けた上げする10進法をふつう使うのは,たまたまわれわれの指が左右あわせて10本あったからにすぎないのではないだろうか.生まれてこのかた10進法になれてきたために,10を何か特別な数のように感じがちであり,また数学そのものが10進法と切り離せないもののように考えてしまいそうであるが,実は10進法と全く同様な数学が,2またはそれ以上の進法のすべてで組み立てられるのである.
一方,数に限らずわれわれが受けとったり,与えたりする情報は,すべて2元的なものの組み合わせで表わせることが知られている.たとえば,電信のモールス符号では,一の2つの符号の組み合わせでカナ,アルファベット,数字などをすべて表わすことができる,さらにわれわれの脳細胞や神経細胞では,興奮と静止の2つの状態しかとれず(all or none),その組み合わせで情報の伝送や処理がなされているものと考えられるが,人間の知能活動自体がすでに2元的なものから構成されていることは,まことに驚くべきことである.
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