技術解説
化学検査の採血時期—なぜ早期空腹時に行なうか
西風 脩
1
,
市田 篤郎
2
1北大歯学部・生化学
2北大・検査部
pp.219-222
発行日 1969年3月15日
Published Date 1969/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542906362
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はじめに
化学検査の重要な使命は,他の臨床検査と同様に,疾病の診断ならびにその病態像,ひいてはその病態機構像の変化を客観的に把握するところにあるため,その基礎ともなるべき生理的変動(正常値の変動)を前もって明らかにしおく必要がある.しかし,その前提をじゅうぶんに満足させることは,けっして容易なことではなく,これらにつき多方面よりの検討が望まれる.
血清などの体液に対しては,それらに含まれる種々成分の濃度の恒常性を維持しようとする数段もの機構が働いている.しかし,実際には,それら成分に対し生理的変動が伴い,それが連続的な数値として表示されるため,病的代謝調節機構の変化をあやまりなくとらえることは,必ずしも容易なことではない.したがって,個体にみられる生理的変動,検体の採取から測定までに至る起こりうる変化,ならびにその誤差の要因について,常にじゅうぶんな知識をもつと同時に,その施行にあたっては細心の注意を必要とする.測定の際の誤差が,生理的変動に比し大なるものであるときには,その変動について論ずることはできず,この場合,ルーチンの測定誤差の限界を生理的にみられる日差変動の幅(正常値の幅)の1/4以下におさめることが化学検査上の評価の必要条件とされている1).
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