研究
血清肝炎(輸血後肝障害)と肝機能検査
板野 竜光
1
,
伊比井 真義
1
,
西屋敷 久男
1
,
三好 サヨ子
1
ITANO TATSUMITSU
1
1社会保険宮崎江南病院臨床検査科
pp.781-783
発行日 1963年10月15日
Published Date 1963/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542906173
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はじめに
血清肝炎を含む輸血後肝障害は,輸血の普及に伴って逐年増加の傾向にある1)。しかもその予後は必ずしも良好でなく,相当数(小坂2)9.1%)が肝硬変症に発展し,少数の死亡例を認める3)11)。諸家の報告を綜合すれば,血清肝炎の発生率は5〜10%となっているが12)−14),これに無黄疸性の者と潜在性の者を加えると,罹患率はさらに上昇することが考えられる。上野15)はこれまでの報告16)−18)とは逆に15例対20例と無黄疸例を多数に認めている。しかも無黄疸群の中に肝生検で実質障害の高度な例が多く含まれること,また遷延再発する者があることを報告している。小坂19)は流行性肝炎が肝硬変症に移行する際,急性期に引き続いて起こる者が意外に少なく(6.8%),かえって再発を繰り返す者(50.0%),もしくは潜在性(43.2%)の者より移行することが多いという。この事実を直ちに血清肝炎に当てはめることができないとしても,無黄疸性ないし潜在性肝炎の重要性がクローズアップされよう。
現在,血清肝炎の対策にはまだ完全なものがなく13)16)ことにそれが全血輸血の場合ウイルスの脅威に対して無防備同様である。それゆえ,輸血の適応決定にはより慎重な検討と,輸血後の厳重な監視とが要求される。この要求に応じるためには,輸血後肝障害をできるだけ早期に,より適確に発見し得る検査術式を選ばねばならない。
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