技術解説
螢光抗体法(1)—その臨床検査への導入のために
及川 淳
1
1東京大学医学部衛生学教室
pp.11-16
発行日 1962年1月15日
Published Date 1962/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542905916
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I.はじめに
細菌学にせよ,組織学にせよ,顕微鏡標本を染色するということは,単に見やすくするためばかりではなく,染め分けということがその重要な目的である。これは上記の分野で最も日常的に使用されているGram染色とH.E.染色を老えれば自明であろう。染色の技術は特異的染色,すなわち問題になっている1つの物質,1つの酵素,あるいは1種類の細菌のみを他のものから染め分けることを目標にして進歩し,組織化学という体系的な学問にまで築き上げられてきた。
さて,ある物質に特異的親和性をもつものを考える場合,生物学者はただちに酵素と抗体を想起するにちがいない。特に後者のあらわす抗原との結合の特異性は,それ自体が免疫学の主要なテーマを構成するほどに著しいものである。たとえば蛋白質の識別の揚合,現在用いられている化学的方法をもってしては,それが蛋白質であるという証明以上を出ることは困難で,超遠心,電気泳動などの物理化学的方法が,蛋白質をやや細別しうるにすぎない。ところが免疫反応を利用すれば,たとえばウシとウマの血清albuminのように化学的にも物理化学的にもきわめて類似した物質をも鋭敏に識別できるのである。
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