私の失敗
パスを含有する尿のビリルビン検査
萩原 啓司
1
1国立広島療養所研究検査科
pp.816
発行日 1961年12月15日
Published Date 1961/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542905912
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先日当所のある病棟から新鮮尿が提出された。一見して胆汁尿と思える色調を呈し,泡沫も黄染されていた。よい教材とばかりちょうど実習に来ていた高看学生を呼んで尿のビリルビン検出法等について述べた後,鮮明な緑色輪を生じ,強陽性(以下緑色輪の発現するものを陽性,出ないものを陰性とよぶ)を呈するものと思って希釈ヨードチンキを重層したが,予想に反し緑色輪はおろか境界面になんの変化も現れない。あわててGmelin試薬を新調して検したが判然としない。この2法で検査した限りでは陰性のごとく思えた。試みに過塩素酸(60%HClO44)を用いたら弱陽性を示したので,薬物等による類似の着色か,あるいは反応妨害物が存在するのか,いろいろ調べたところパスを検出した。(あとで病棟に問い合わせて確認。同時に黄疸が出たため当日昼からパス服用を中止したことも知る。)翌日再提出された尿ではRosin法,Gmelin法ともに強陽性を呈した。そこで同尿にパスを添加(1g/dlのパスナトリウム溶液0.5mlを被検尿3mlに加えた。)したものについて行なった結果は,Rosin法陰性,Gmelin法微弱陽性,過塩素酸を加えたものは弱陽性を示した。また1鋭敏な法といわれているHarrison法,Watson-Hawkinson法等は試薬中に含まれるFeCl3とパスが反応して判定不能であった。
以上パスを含有する尿のビリルビンの検出に困難でことに最も簡便な方法としてよく用いられるRosinヨードチンキ法は全く不適であり,過塩素酸を用いることによりある程度検出できるように思った。
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