医学常識
血液型と産科
官川 統
1
1東京大学医学部産婦人科学教室
pp.317-319
発行日 1961年5月15日
Published Date 1961/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542905833
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はしがき
第二次世界大戦を契機として輸血に関する研究が進みその副作用追究の結果,LandsteinerらによつてRh型(即ちまつたく新しい血液型)が発見されました。今までの輸血はABO型の適合位の検査で行われていましたが,ABO型がよく適合していてもしばしば輸血後に烈しい悪寒等の副作用が見られ,ABO以外の型の不適合の存在がだんだんとあきらかになつてきたのです。そしてRh型の血液の人とRh型の陰性の血液型の人と2種類あることが判り(米国ではRh陰性率は10〜15%,本邦では0.5〜1%)陰性の人に何らかの形で感作が起ると(即ち輸血,妊娠などによつてRh陽性の血球が入り,Rh型に対する抗体ができるのをいう)次回にもしRh型陽性の血液が輸血された場合,当然血球の凝集→溶血が起るわけであります。これはちようど0型の人にAまたはB型の血液を輸血した場合とまつたく同じことであります。
この原理は産科領域にもおよび今までその原因が不明とされていた新生児重症黄疽,脳性麻痺,先天性奇形,習慣性流早産なども血液型の不適合が関係しているらしいことが判つてきました。即ち母親と血液型の合わない児が妊娠された時,何らかの機序によつて(例えばRh型陰性の母親にRh型陽性の児が受胎される)胎児の赤血球が胎盤を通つて母親の血液循環に入り,そのために免疫が起り当然抗体が生ずるわけであります。
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