技術解説
病原真菌株の保存法(1)
岩田 和夫
1
1東京大学医学部細菌学教室
pp.351-354
発行日 1960年6月15日
Published Date 1960/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542905709
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まえがき
最近,わが国でも真菌研究者がとみにふえてきて,取り扱う真菌の種類も多種に及ぶようになり,必然的に菌株をいかにして保存すべきかということについて関心が深まりつつあるようである。真菌も微生物の中の一群である以上,保存上の取り扱いが他の微生物の場合とその趣旨において,おおむね同様であることはいうまでもないであろう。ところで一般の病原微生物株の保存法については,既に本誌Vol,4 No.1,27-33,1960に佐藤和男博士が詳細懇切に記述しておられるので,本文においては,菌株保存に関する一般的な記述は省略し,専ら真菌,特に病原真菌の保存法について,現在おこなわれている一般的な方法を紹介し,浅い経験ながら私見をつけ加えて行きたいと思う。
真菌株の保存方法が他の微生物株のそれと大綱においては同様であるとはいえ,前者が形態学的生理学的その他の諸性状において後者とは大きく相異する以上,かなり趣きの異なつたものであることは当然であろう。このような見地からすれば保存法を云々する前に,真菌全般に関する基礎的知識をもつことが先決問題であるが,もとより本文ではそれにふれることが目的でない。
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