新しい検査法
病原性真菌の検査法(その1)
岩田 和夫
1
1東京大学(細菌学教室)
pp.303-308
発行日 1958年5月15日
Published Date 1958/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542905467
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はしがき
一口に真菌Eumycetes, true fungiといつても,医真菌学medical mycologyの対象となる真菌は,いわゆる汚染菌contaminantsも含めて,相当多数にのぼり,その検査法も,かなり多岐にわたるのは当然である。しかしその間に全般的に通ずる事項も多く,また一般細菌とは,分離培養その他の扱い方においてかなり手技の異なることを承知しておくべきである。
真菌の大多数は,形態学的に比較的大きく,この点,特に病的材料を直接無染色あるいは染色標本にして観察し,真菌要素fungus elements,即ち菌糸,胞子及びそれらの示す特徴的な特殊構造等を確認しておくことが肝要である。たとえ,その後の分離培養が不成功に終つても,真菌症mycoses, fungous infectionsの診断上,極めて有利で,場合によつては,それのみで診断の確定する場合も少くないのである。分離培養が成功しえないのは,培地の選択宜しきをえない場合もあるけれども,そうでなく,しかもとにかく直接検査で真菌要素を認めえているにもかかわらず,培養が不成功に終ることは真菌感染の場合,時折経験されるところだからである。慢性の真菌感染において,臨床症状のはつきりしないときなど,特にこの病的材料の直接観察で,真菌要素の確認に努めることは大切である。ところが案外これが忘れられがちである。
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