高級技術講義
病原大腸菌の血清学的検査
小張 一峰
1
1東京都駒込病院伝染科
pp.131-135
発行日 1959年3月15日
Published Date 1959/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542905554
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腸管系伝染病の病原菌を決定するためには,血清学的検査が重要な役割を演ずることは周知の通りである。中でも,病原大腸菌については欠くことのできない検査である。というのは,人体の腸管内に常時棲息する普通の大腸菌と乳幼児下痢症の原因となる病原大腸菌を区別する決め手は血清学的検査以外にはないからである。
約40年前にドイツのAdamなどが,大腸菌が乳児の消化不良症の原因になる,という考えをもつたのであつたが,その後この学説は余り人汝の注目をひかずにいた。ところが,近年になつて英国の学者達がこの考えをむし返えして,産院や病院で乳児の間に流行する下痢症の原因はある種の大腸菌である,ということを発表した。丁度この頃に,従来もサルモネラなどの腸内細菌の血清学的分類を手広く行つていたKauffmannなどの北欧の学者達が,今まで難事とされていた大腸菌の血清学的分類のあらましを完成することができたのである。そこで,古くはAdamの消化不良症の原因と目された大腸菌も英国の学者達がα大腸菌大,β腸菌と呼んだ病原大腸菌も,Kauffmannなどの血清学的分類表に照らし合わせてみると一定の型のものであることが分り,ここに病原大腸菌という概念がはつきりとしてきたわけである。
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