高級技術講義
ウイルスの血清反応の実際(Ⅲ)
甲野 礼作
1
1京都大学
pp.705-712
発行日 1958年12月15日
Published Date 1958/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542905528
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Ⅳ.赤血球凝集抑制試験
Hirst1)とMcClelland及びHare2)は各独立にインフルエンザウイルスの赤血球凝集現象(Hemagglutination,以下HAと略す。)を発見し,同時に免疫血清による該現象の発現阻止を観察し,赤血球凝集抑制試験(Hemagglutination-inhibition test,以下HIと略す。)として抗体の測定すなわちインフルエンザの血清診断に応用されるようになつた0最初はHirst-Pickels3)による光電比濁法が用いられたが,Salk4)は簡単な沈降像法を考案して,これが一般に普及した。
その後多くのウイルスにHAが知られ,もはやこれはインフルエンザウイルスに特有のものではなくなつた。むしろHAはウイルス一般の通性ですらあるようにも思われる。ウイルスのHAは大別して,赤血球凝集素(Hemagglutinin)がウイルス粒子と不可分のものと,分離し得るものとの2群に分けることが出来る。いづれにしてもこれはウイルスの赤血球凝集素は抗体によつて中和せられ,抗血清との間にHIを行うことが出来るものであるが,実用的に患者の血清診断法としてどの程度日常化しているかというと,未だ案外種類が少いようである。
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