高級技術講義
超微小電極の作り方と取扱い方
冨田 恒男
1
,
村上 元彦
1
1慶応義塾大学医学部生理学教室
pp.325-330
発行日 1957年9月15日
Published Date 1957/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542905377
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I.緒言
LingとGerardが1949年に所謂超微小電極を用いて細胞内から活動電位を誘導して以来,生理学部門では急速に且広範囲に本法の普及を見た。又これが最近に到つて臨床部門でも応用されようとする気運にある事は喜ばしい事である。本法を実施するに当つては多少の熟練と電気的知識とを必要とする。電極及び前置増幅器の電気的理論に関しては勝木1)2)及び古河・後藤3)の解説があり,冨田4)も最近これらについて書いたから,それらを参考にして頂く事にして,本稿では超微小電極の作り方の実際及びその取扱い方を少し詳しく書いて見たい。何事でも始めて試みる時にはつまらぬ事に時間を浪費するものであるから,著者らが日常の経験から所謂コツといつたものについて書く事は無駄な事ではないであろう。
超微小電極法は,細いガラス毛細管電極で細胞の形質膜を穿刺し,細胞内部の電位を誘導しようとするものであるから尖端が充分に細く,0.5μ以下なるを要する.もしそれ以上の太さであると刺入が困難になるし,又たとえ刺入出来たとしても膜を損傷してしまつて,充分に安定な電位を誘導する事が出来ない。その上又尖端が太いと電極内部に充填されたKCI溶液は細胞内部に拡散して,そのイオン組成を変化させてしまう懼れがある。であるから電極製作に当つては細心の注意が必要である。
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