特集 造血器腫瘍
Ⅳ 検査の実際
2.慢性白血病―1)慢性骨髄性白血病
高山 信之
1
Nobuyuki TAKAYAMA
1
1杏林大学医学部第2内科
pp.1361-1367
発行日 2002年10月30日
Published Date 2002/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542905242
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
慢性骨髄性白血病(chronic myeloid leukemia;CML)は,主に顆粒球系細胞の異常増殖を特徴とする慢性期に始まり,3~5年の経過で移行期を経て最終的には急性転化に至る白血病である1).1960年代に発見されたPhiladelphia染色体[t(9;22)(q34;q11)]という疾患特異的マーカーの存在は,この疾患が多能性幹細胞のクローン性増殖であることを完壁に証明し,また,日常の診断を単純明快にした.次いで1984年,当時急速な勢いで発展していた分子生物学の恩恵を受け,Philadelphia染色体の本体が9番染色体上のABL遺伝子と,22番染色体上のBCR遺伝子の融合によるBCR/ABL遺伝子の形成であることが明らかにされ(図1),CMLの病態解明は大きく進歩することになる.このように他の白血病の先陣を切って分子レベルでの解明が進んだCMLは,以降,様々な遺伝子診断法が応用されるに至り,CMLは常に新しい検査技術のモデルケースであり続けているといえる.その背景には,造血幹細胞移植,インターフェロン療法,そして最近では分子標的治療薬であるImaitnib mesylate(Glivec®)の開発などの治療法の進歩により,残存白血病細胞のレベルをモニターすることが臨床サイドからの大きな要求とされていることも見逃せない.本稿では,CMLにおける最近の検査法の進歩について概説する.
Copyright © 2002, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.