今月の主題 ビタミン
巻頭言
ビタミンと臨床検査
橋詰 直孝
1
Naotaka HASIZUME
1
1東邦大学医学部大橋病院臨床検査医学研究室
pp.1047-1048
発行日 2001年10月15日
Published Date 2001/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542904876
- 有料閲覧
- 文献概要
わが国では1925年(大正15年)にビタミンB1欠乏症の一つである脚気で約3万人が死亡している.当時,結核と並んで2大国民病として恐れられていた.一方,ヨーロッパでは15世紀末から18世紀にかけて遠洋航海が盛んになり,ビタミンC欠乏症である壊血病が猛威をふるい,航海に出た船員の3分の2を壊血病で失ったと伝えられている.人類の歴史のなかで,ビタミン欠乏症との闘いは壮絶なものであった.
20世紀になってから,ビタミンというものの存在が認められ,ここ50年間の生化学および薬理学的研究の急速な発展によりビタミンの単離・構造の決定そして合成がなされ,今やビタミン欠乏症は過去の疾患となったと考えられるようになった.しかし,世界では約7億の民が栄養失調で苦しんでおり,そのなかに多くのビタミン欠乏症も存在している.わが国においてもビタミン欠乏症は散見する.医師がビタミン欠乏症は過去の疾患と思い込んでおり,誤診し,なかには死に至り訴訟問題にまで至ることもある.この問題を解決するためには歴史を知ることである.そこで上原万里子先生に「ビタミンの歴史」をお願いした.
Copyright © 2001, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.