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ビフィズス菌を使用した腫瘍特異的な遺伝子治療
佐々木 貴之
1
,
中村 俊幸
1
,
藤森 実
1
1信州大学医学部第2外科
キーワード:
嫌気性菌
,
腫瘍ターゲッティング
,
Enzyme/Prodrug療法
Keyword:
嫌気性菌
,
腫瘍ターゲッティング
,
Enzyme/Prodrug療法
pp.1009-1013
発行日 2001年9月15日
Published Date 2001/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542904869
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1.はじめに
固形癌の遺伝子治療の問題点の1つに,いかに特異的に腫瘍組織に目的の遺伝子を運ぶかという問題がある.現時点では全身投与ですべての腫瘍に選択的に遺伝子を導入すること,すなわち腫瘍ターゲッティングは極めて困難である.
固形癌はその種類にかかわらず,腫瘍内が正常組織に比べて嫌気的環境であることが報告されいる1).木村,谷口らは20年前にすでにこの腫瘍内が正常組織に比べて嫌気的環境であることに注目し,嫌気性菌であるBifidobacterium bifidum(LacB)を担癌マウスの尾静脈より全身投与すると,LacBが腫瘍特異的に集まり,増殖することを報告している2).最近になって,欧米でも腫瘍内の嫌気的環境をターゲットにした固形癌の治療が注目されており3),Foxらは嫌気性菌であるClostridiaを4),Pawelekらは栄養要求性菌のSalmonellaを腫瘍ターゲッティングに応用している5).しかし,ClostridiaやSalmonellaはヒトの体内において病原性を有することから,必ずしも固形癌の遺伝子治療において安全な遺伝子輸送担体とはいえない6,7).また腫瘍ターゲッティングに関しても,Salmonella typhimuriumにおいては,腫瘍以外の組織,特に肝臓への集積が少なからず認められる点に問題がある.
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