今月の主題 広義のアポリポ蛋白
巻頭言
広義のアポリポ蛋白―量から質の検査へ
戸塚 実
1
Minoru TOZUKA
1
1東京医科歯科大学大学院保健衛生学研究科先端分析検査学分野
pp.343-344
発行日 2010年4月15日
Published Date 2010/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542102266
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「動脈硬化」といえば「コレステロール」といわれるほど,世間に周知された関係である.細胞膜の形成やステロイドホルモン合成に重要な役割を果たしているにもかかわらず,コレステロールは嫌われ者である.さらに,コレステロールにも善玉と悪玉,すなわちHDL-コレステロール(HDL-C)とLDL-コレステロール(LDL-C)が存在すると知られるようになった.もちろん,コレステロールそのものに悪玉も善玉もないが,コレステロールという単なる脂質からリポ蛋白という複合体を基準にした考え方が一般的に定着してきた.それ以来,動脈硬化の危険因子としてのLDL,防御因子としてのHDLはそれぞれ注目を集めることになる.
HDLの善玉説は1968年,Glomsetの発表に端を発すると考えられる.彼はHDLが末梢組織から過剰なコレステロールを肝臓へ転送することを示唆している.1975年,Millerらの報告によって,虚血性心疾患の防御因子としてHDLは一躍脚光を浴びるようになった.その後,多くの疫学的研究によって血中HDL-C濃度と虚血性心疾患発症との間に逆相関のあることが証明されている.1977年,Framingham studyはその代表とされる.わが国においてHDL-Cが日常検査に取り入れられるようになったのも,まさに1970年代の終わりである.ここ30~40年の間に臨床化学検査で最も検査数が増加し,定着した検査項目の1つであるといっても過言ではない.
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