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染色体の検査は,遺伝子検査・遺伝子診断とは基本的に異なっている.それらは,取り扱う材料と方法が異なるだけでなく,対象とする疾患が,同じ遺伝病であっても多発奇形,成長障害,発達遅延など多彩な臨床症状を呈する例が多いこと,精神遅滞が存在するなど,単一遺伝子の障害では説明できない症例が多いことである.逆に,そのような多彩な症状を有する疾患では,染色体異常を疑って検索が進められる例も多いし,検索を進める姿勢が重要となる.したがって,対象となる疾患群は基本的には白血病・悪性腫瘍に関する検査,遺伝病に関する出生前診断などと同一のようであっても,適応となる病態と疾患の選択を厳密にする必要があり,試料の調整,検体の採取法でも厳密さが要求されることになる.したがって,本号の特集ではこの染色体検査の問題を,適応となる疾患群の問題,日常臨床でのかかわり合いなどを含めて,包括的に取り上げることとする.
染色体検査では対象疾患への適応の選択が強く求められる.特に対象とする疾患により,培養液の組成,添加物質,培養時間など試料の調整のほうに問題があるので対象となる疾患が検査サイドに適切に伝えられることが要求される.それらは,核型の確認を行うDown症候群,18トリソミー症候群などでは,診断のみならず,次子での再発危険率の推定など遺伝カウンセリングのためにも染色体検査は重要となる.そして,これまでの対象疾患に対して,解析精度が著しく向上している現状で,対象疾患が拡大しているようなことを東京医科歯科大学難治疾患研究所池内先生に"適応と解析精度の進展"という話題で総説をお願いしてある.一方,得られた結果をどのように理解し,日常臨床で対応するかについては,「染色体異常をみつけたら」のタイトルで山口大学の梶井先生にお願いした.検査を担当する者の役割なども大きくクローズアップされると考える.
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