特集 細胞診―21世紀への展望
第4章 判定の実際
9.呼吸器:高分化扁平上皮癌の鑑別
柴 光年
1
,
田口 明美
2
Mitsutoshi SHIBA
1
,
Akemi TAGUCHI
2
1君津中央病院呼吸器外科
2千葉県対がん協会検査部
pp.1307-1309
発行日 2000年10月30日
Published Date 2000/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542904562
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高分化扁平上皮癌の細胞像
扁平上皮癌の分化度は角化の程度により表現される.すなわち高分化型扁平上皮癌は細胞所見による分類では,角化型扁平上皮癌である.したがって,高分化扁平上皮癌の細胞像では角化が明瞭に認められ,典型例ではその鑑別は比較的容易である.
高分化扁平上皮癌のPapanicolaou (Pap)染色での典型的な細胞像としては,以下のようになる.①喀痰における,細胞配列は特に単個のフリーセルの形で出現することが多いが,小集団では敷石状の平面的配列を示すのが特徴で,進行癌では壊死背景を認めることが多い.②胞体はオレンジG (OG)好性ないしライトグリーン(LG)好性で彩度が高く,ガラスのように重厚な透明感があるものや胞体内に層状構造を呈する細胞が出現する.胞体の形状は類円形,多陵形細胞のほかに,線維(fiber)型,オタマジャクシ(tadpole)型,ヘビ(snake)型など奇怪な形状を示すものも多く出現する.また時には,扁平上皮細胞がたまねぎ状に取り巻く真珠形成(癌真珠)も見られることがある.これらは,異常角化(dyskeratosis)を示す重要な所見である.③核は一般にクロマチンの増量が著明で顆粒状から粗顆粒状を示すものが多く,角化や変性が進んだ細胞では濃縮,融解,破砕状の核が見られるようになる.核小体は変性の少ない新鮮細胞でのみ見られるが,一般に1~数個であり目だたないことも多い.これは扁平上皮癌細胞の核小体は,腺癌細胞のように,打ち抜き状に見られるものが少ないことによる.
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