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本号の特集は「糖化蛋白と蛋白のグリケーション」である.当初は,蛋白質がグルコースを始めとする還元糖によって非酵素的に修飾されることから,nonenzymatic glycosylationという表現が使用されていたが,enzymaticglycosylation (さまざまな糖転移酵素によって糖蛋白質に糖鎖の付加が起こる)と明確に区別するために,最近はglycationが使用されるようになった.すなわち,glycationはnonenzymatic glycosylationの現代版である.しかし,このglycationがわが国では「糖化」という訳語で表現されており,「糖が化けるとは不自然である」と反対する研究者も少なくないので,「糖化」よりも「グリケーション」をそのまま日本語の科学用語として使用することが妥当と考えられる(これは筆者の私見であるがこの場を借りて提案させていただく).
このグリケーションは発見者の名前にちなんでメイラード反応とも呼ばれているが,アマドリ転位産物までの前期反応と,さらに反応が進んで蛍光・褐色・架橋形成を特徴とするadvanced glycation end products (AGE)へと変化する後期反応に分けて考えられる.さて,この「グリケーション」の話題が最近,医学雑誌の特集として取り上げられる機会が増加した.その大きな理由として本分野の研究の著しい進展がある.第一に,種々の生体蛋白質が老化や老化関連疾患などでAGE化を受けることが明確になり,初期には漠然とした概念で「AGE」が語られたが,最近の機器分析や免疫学的手法の進歩によって,個々のAGE構造体に視点を置いた研究が活発に展開され,現在10種類以上のAGE構造体が生体蛋白で同定されている(同号"糖化蛋白の構造と生体内存在"(239~244頁)の項参照).第二に,グルコースから種々のdicarbonylcompoundが派生して,これら化学反応に富むアルデヒドが中間体として作用してAGEの形成に関与していることが明らかになってきた("糖化蛋白の構造と生体内存在"(239~244頁)および"尿毒症におけるペントシジン"(245~249頁)の項参照).
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