特集 臨床検査の新しい展開―環境保全への挑戦
Ⅱ.環境問題と疾病
7.化学物質の環境へのリスク
4)ダイオキシンと健康リスク
曾根 秀子
1,2
Hideko SONE
1,2
1国立環境研究所地域環境研究グループ
2科学技術振興事業団戦略的基礎研究推進事業
pp.1383-1389
発行日 1999年10月30日
Published Date 1999/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542904235
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はじめに
連日のようにメディアからダイオキシン報道がわれわれのもとに届く.各省庁とも,ダイオキシン対策・規制の検討に躍起になっている.6月には環境庁と厚生省の合同委員会によってわが国の耐容一日摂取量(Tolerable Daily Intake;TDI)の見直し値が公表された1).その値は,1999年2月に世界保健機構(WHO)において提案された1~4pg/kg/日の上限と同じ値であった.TDI値は,ヒトが生涯摂取しても有害性の影響を受けない一日量を指し,人の健康を脅かす危険性(リスク)がどれだけあるかという目安によく用いられる.今回のWHOのTDI見直しでは,ヒトへの外挿をより精度の高いものにするために,薬物速度論的な考え方が取り入れられた.加えて,これまであまり重要視されていなかった非発癌性の毒性に関しての再検討が推進された.その結果,発癌性より低い暴露量での生体影響が明らかになった.非発癌性の毒性は実に多様である.
本稿では,TDI見直しの資料となった非発癌性の毒性研究に関する知見のみならず,ヒトへの健康被害やこれからの生体影響研究についても紹介する.
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