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はじめに
p15遺伝子は癌抑制遺伝子の候補として染色体9p21領域に見いだされた遺伝子の1つである.染色体9p21領域は急性リンパ性白血病,膀胱癌,脳腫瘍など種々の悪性腫瘍で高頻度に欠失する領域であり,また家族性悪性黒色腫(FM)の家系のリンケージ解析から同症の責任遺伝子座がマップされていた領域である.同領域に存在する欠失の標的遺伝子を単離する目的で,多数の腫瘍細胞株における染色体9p21領域のホモ接合性欠失の検討が行われた結果,これら腫瘍細胞株における最小の共通欠失領域に存在する構造遺伝子としてMTS1およびMTS2が単離された1).MTS1遺伝子は,これに先立って細胞周期の調節因子として精製単離されていたサイクリン依存性キナーゼ阻害因子(cyclin dpendent kinase inhibitor:CKI)の1つ,p16(p161NK4A)蛋白をコードしていることが明らかとなり,さらにこのMTS1と高い相同性を有するMTS2もその後の検討から,もう1つのCKI,p15(p151NK4B)蛋白をコードしてることが示された2).これらの蛋白は細胞周期のG1→S期に働いて,CDK4(ないしCDK6)に結合しその活性を阻害することにより細胞周期の停止を誘導する(図1).現在,いくつかの理由から染色体9p21の欠失の標的癌抑制遺伝子はp16であるとの考えが広く受け入れられているが,p15遺伝子についても細胞周期のG1→S期の移行を抑制する重要な機能分子であること,種々の悪性腫瘍で高頻度にホモ接合性欠失を認めること,さらに近年プロモーター領域のメチル化によりp15遺伝子のみが不活化を受けている例も示されており,その癌化への関与が推定されている3).
本稿では特にp15遺伝子の悪性腫瘍における異常とその検討方法について概説する.
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