特集 感染症診断へのアプローチ
各論
7.尿路感染症
横尾 彰文
1
,
広瀬 崇興
1
,
高橋 聡
1
Akifumi YOKOO
1
,
Takaoki HIROSE
1
,
Satoshi TAKAHASHI
1
1札幌医科大学医学部泌尿器科
pp.1369-1383
発行日 1998年10月30日
Published Date 1998/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542903896
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はじめに
尿路感染症は呼吸器感染症と同様に日常診療上,最も遭遇することの多い感染症の1つである.尿路感染症は尿路腔へ病原微生物が侵入し,尿路粘膜へ付着,定着,増殖することにより発症する.多くは外尿道口から侵入する上行性感染であり,腎から膀胱に至る粘膜を主体とした尿路系臓器組織に炎症が惹起された病態である.尿路感染症は臨床的には尿流停滞の原因となる基礎疾患(尿路結石,尿路腫瘍,前立腺肥大症,神経因性膀胱,水腎症など)の有無により,①基礎疾患を有しない単純性尿路感染症と基礎疾患を有する複雑性尿路感染症に大別され,特に後者は尿路留置カテーテルの有無により,②留置カテーテルを有しない複雑性尿路感染症と,③留置カテーテルを有する複雑性尿路感染症,の2つに分類される.また,感染部位により上部尿路の腎盂腎炎と下部尿路の膀胱炎に,症状により急性と慢性に分類され,これらの組み合わせで急性単純性膀胱炎(または腎盂腎炎),慢性複雑性膀胱炎(または腎盂腎炎),急性複雑性腎盂腎炎(慢性複雑性腎盂腎炎の急性増悪)などと診断される.前立腺炎と精巣上体炎は狭義には性器感染症であるが,これらは性感染症(STD)とは不可分のものであり,広義にはSTDに含めて扱われることが多い1).
尿路感染症の診断は,まず尿路系臓器組織に感染の存在を証明することであり,次いでその起炎菌の分離,同定,さらに感染部位の診断と尿路の基礎疾患の有無および宿主側の病態の検討が必要となる.図1に尿路感染症診断のフローチャートを示す.本稿ではこの流れに沿って解説する.
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