特集 感染症診断へのアプローチ
各論
8.性器感染症
三鴨 廣繁
1
,
玉舎 輝彦
1
Hiroshige MIKAMO
1
,
Teruhiko TAMAYA
1
1岐阜大学医学部産科婦人科
pp.1385-1390
発行日 1998年10月30日
Published Date 1998/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542903897
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はじめに
産婦人科領域感染症は,内性器感染症,外性器感染症,腟炎,子宮頸管炎,尿路感染症,羊水感染症(絨毛羊膜炎も含む)に大別される.内性器感染症とは,子宮内感染,子宮付属器炎,骨盤腹膜炎,ダグラス窩膿瘍,子宮旁結合織炎など内性器およびその結合組織の炎症の総称である.内性器感染症は大部分が上行性感染であり,子宮内感染から子宮付属器炎へ,子宮付属器炎から骨盤腹膜炎へと進展することが一般的である.したがって,今日では骨盤内炎症性疾患(PID;pelvic inflammatory disease)と表現されている.また,外性器感染症としては,バルトリン腺炎・膿瘍,外陰炎・膿瘍があるが,外陰炎・膿瘍は皮膚科・外科で取り扱われることも多い.羊水感染症(絨毛羊膜炎も含む)は,早産,前期破水と関係することが最近明らかになってきた.
産婦人科領域の感染症の原因菌は,外性器,内性器のいずれにおいても好気性菌,微好気性菌,嫌気性菌,淋菌,クラミジア,トリコモナスなど極めて多様であるが,婦人性器の細菌感染症では偏性嫌気性菌が関与する頻度が高く,膿瘍の形成や壊死などの組織変化をきたすことが多い.これらの感染症で偏性嫌気性菌は多くの場合,偏性好気性菌や通性嫌気性菌との複数菌感染であるが,嫌気培養には莫大な労力と費用が必要であるという先入観のために嫌気性菌検査は日常検査となっていないのが現状である.しかしながら,臨床上,病態を正確に把握し,抗菌薬の適正使用を施行するためには,可能な限り嫌気性菌検査を施行するのが望ましい.
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