今月の主題 フローサイトメトリー―最近の進歩
巻頭言
フローサイトメトリー―さらなる展開を期待して
中原 一彦
1
Kazuhiko NAKAHARA
1
1東京大学医学部臨床検査医学
pp.1101-1102
発行日 1997年10月15日
Published Date 1997/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542903435
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小生が指導医としての臨床のデューティを終え,研究のために東京大学の免疫学教室(当時多田富雄教授)の門をたたいたのは,もう20年も前のことになろうか.そこに,現順天堂大学免疫学教室教授の奥村康先生が講師でおられ,小生は奥村先生にいろいろご指導いただくことになった.当時はマウスなど動物で研究されていた免疫学が,ようやくヒトに応用されようとしているころであった.小生の専門とする血液学の診断にはまだほとんど免疫学が導入されていないときであり,血球に対する抗体を使って白血病などの血液疾患の診断にそれらを利用できないかを検討することが小生のテーマであった.
まだモノクローナル抗体は開発されていないときであり,ウサギを免疫して作製した糖脂質に対するポリクローナル抗体を用いて,蛍光抗体法によって陽性,陰性細胞を判定するわけである.その判定には通常は蛍光顕微鏡を用いることになるが,判定は夜中になることが多く,眠い眼をこすりながらの作業になることもしばしばであった.したがって,どうしても判定に時間がかかり,そのうち細胞の蛍光の強さが薄れてしまうといった不合理さをたびたび経験した.ところが幸いなことに,奥村先生がスタンフォード大学に留学中に一緒に開発にも携わったというFACS(Fluorescence Activated Cell Sorter)Ⅱが同研究室にあった.これは,奥村先生が帰国のときに一緒に持ち帰ったという,まさに日本におけるFACS第1号機であった.ちなみに,FACSはフローサイトメーターの代名詞のように言われているが,実は固有名詞である.
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