コーヒーブレイク
北越雪譜より
屋形 稔
1
1新潟大学
pp.624
発行日 1997年6月15日
Published Date 1997/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542903333
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先日,越後塩沢の人から牧之(ぼくし)という酒を戴いた.近くの八海山から名付けた八海山という酒は有名で入手し難いが,牧之はそれ以上の幻の酒らしい.味も抜群であるがその名の由来は雪国を描いた古今の名著(地誌兼エッセイ)と言われる北越雪譜の著者で塩沢の人,鈴木牧之からとったものと思われる.
約160年前に刊行された本書は,牧之が45年を費やして雪に埋もれて暮らす自分たちの地域,人間,生活のすべてを天下に知らしめようと苦心惨憺出版したものである.江戸期の雪国百科全書と呼ばれ,文章は練達で挿画の明確さも特筆に価するものである.内容は多くの評書,特に昭和11年から収載された岩波文庫の後記などに詳しいが,本書をまだ読んでない方には一読をお薦めしたい.つい最近の新聞でも地元三条市の野島出版が挿絵文字までを含め丸ごと現代語訳したものを刊行したと報じられている.
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