特集 血栓症と血小板凝固線溶系検査
血栓性疾患と検査
7.DIC
櫻川 信男
1
Nobuo SAKURAGAWA
1
1富山医科薬科大学医学部臨床検査医学
pp.263-266
発行日 1996年10月30日
Published Date 1996/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542903143
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はじめに
DIC (disseminated intravascular coagulation syn-drome)は先行する基礎疾患(別項参照)が存在し,それに起因する凝血系活性化の"引き金物質"が凝固・線溶系,血小板系および血管系のすべてにわたって活性化を惹起することに起因する血栓形成による重要臓器障害と凝血系因子の消費による減少がもたらす出血を伴う病態である.したがって表1,図1に示すごとく多くの凝血系活性化を示す要因(因子群と分子マーカー)がそれぞれ特異の意味を持って診断に使用されるが,それらの特性は上記の"引き金物質"によって決定される.例えば白血病や固型癌ではそれらの病的細胞に含有される組織因子(tissue factor; TF)による凝固活性化;急性前骨髄球性白血病では組織プラスミノゲン・アクチベーター(tissue plasminogenactivator; t-PA)による線溶系活性化;重症感染症ではエンドトキシンによる血管内皮や単球からのTF放出やインターロイキン1による血管内皮細胞障害などが複合作用を及ぼして終局的にトロンビンやプラスミンが出現し,ほかに血小板も刺激を受けて血栓形成をもたらす.この過程では凝血系酵素や補酵素および阻害要因は相互に反応して限定分解を受けて消費されて減少し,その結果として分解産物やペプタイドあるいは阻害物質の複合体が出現して,いわゆる"分子マーカー"の測定意義が生ずる.
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