今月の主題 血栓症
検査と疾患—その動きと考え方・85
DIC
松田 保
1
,
深山 牧子
2
,
森 真由美
2
Tamotsu MATSUDA
1
,
Makiko FUKAYAMA
2
,
Mayumi MORI
2
1東京都老人総合研究所臨床第二生理
2東京都養育院付属病院血液科
pp.46-53
発行日 1984年1月15日
Published Date 1984/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542912096
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DICとは
DICは,disseminated intravascular coagula-tionの略語であり,その名のように,なんらかの原因によって全身の,主として細小血管内に血栓が多発し,このため血液の凝固に必要な,流血中の血小板やフィブリノゲンをはじめとする各種の凝固因子が血栓の材料として消費され,特異な凝固異常を呈する症候群である.DICは,一種の極端な血栓傾向と言ってよいが,上記のような機序によって見かけ上の血液の凝固性はかえって低下しており,このための出血傾向や,血栓によって生じた壊死や,静脈のうっ血性の破綻などによって,血栓とは逆の現象である出血症状をも同時に生ずることが多い.このように,DICはその本態とは一見矛盾する症状と検査所見を呈する点より,当初,主として血液凝固学者によって注目された.これは1960年代のことであるが,この当時,典型的なDICとして注目されたのは,このような凝固異常—血小板やフィブリノゲンが"消費"されて低下するため,"消費性凝固障害"と呼ばれるが—の程度が極端で著明な出血傾向を呈し,その機序が従来の概念では説明できないような症例であった.このような例はあまり多くはないので,当時,DICはその一種逆説的な凝固異常をも考え併せ,きわめて珍しい症候群と考えられる傾向にあった.
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