今月の表紙 表在性真菌症の臨床検査シリーズ
皮膚カンジダ症―1.直接鏡検および分離・鑑別培養
山口 英世
1
,
内田 勝久
1
,
楠 俊雄
2
1帝京大学医学部医真菌研究センター
2くすのき皮膚科
発行日 1996年1月15日
Published Date 1996/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542902813
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不完全酵母の最大の属genusとして知られるCandida (属)には,C.albicansをはじめとしてヒト病原性を持つ菌種が多数含まれ,深在性ならびに表在性の感染症(カンジダ症)の原因菌となっている.表在性カンジダは,皮膚カンジダ症と粘膜(口腔,腟など)カンジダ症とに大別される.深在性カンジダ症についてはC.tropicalis, C.Par-apsilosis, C.glabrataなどのnon-albicans Can-didaに起因する症例が近年増加する傾向にあるが,皮膚カンジダ症や口腔カンジダ症は依然としてC.albicansによるものが圧倒的に多い.
深在性カンジダ症の診断,特に早期診断がしばしば困難をきわめることとは対照的に,表在性カンジダ症は比較的容易に診断することができる.その場合,臨床所見と合わせて,患部から採取した検体中にCandidaを証明することが不可欠となる.C.albicansなどはヒトの常在菌として健常人にも高率に存在するので,分離培養するだけでは不十分であり,必ず直接鏡検を行わなければならない.その結果,酵母形細胞に混って真性菌糸または仮性菌糸が観察されれば,本症の診断はほぼ確実となる(図1).共生菌として常在する場合には,ほとんど菌糸形をとらないからである.直接鏡検用の標本は,KOH法,パーカーインク・KOH法などによって作製する。
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