特集 ホルモンと生理活性物質
各論
2.下垂体前葉ホルモン系
5)プロラクチン
山路 徹
1
Toru YAMAJI
1
1東京大学医学部第3内科
pp.88-90
発行日 1994年10月30日
Published Date 1994/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542902182
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
生合成・分泌・機能
1.生合成
ヒトのプロラクチン(prolactin)は199個のアミノ酸で構成されており,分子内に3個のS-S結合がある.下垂体前葉プロラクチン細胞では,まずプレプロラクチンが産生された後,28個のアミノ酸からなるシグナルペプチドが外れてプロラクチンに変換される.血液や下垂体中のプロラクチンは多くが単量体であるが,二量体や四量体などの多量体プロラクチン,糖鎖を持つプロラクチンも存在する.多量体プロラクチンや糖化プロラクチンの生理的意義については明らかになっていない.
ヒトのプロラクチン遺伝子は第6染色体上に存在する.5個のエキソンからなり,10kb以上の長さを有する.プロラクチン遺伝子の発現や転写,プロラクチン細胞の増殖には,転写調節因子Pit-1(GHF-1)が重要な役割を果たしている.エストロゲン,TRH(thyrotropin-releasing hormone),EGF(epidermal growth factor)はプロラクチンの生合成を促進し,ドーパミンはこれを抑制する.いずれの場合も,効果が現れるためには,プロラクチン遺伝子上流にあるPit-1結合部位の存在が必要である.なお,プロラクチンのアミノ酸配列,プロラクチン遺伝子の構造には,成長ホルモンや胎盤性ラクトゲンと共通点があり,これら3つのホルモン遺伝子は進化の過程で同一の祖先遺伝子から派生したものと考えられている.
Copyright © 1994, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.